挨 拶


くあ、とあくびをひとつ。
笠井は目をこすって起き上がる。ついでにくしゃみもひとつ。鳥肌の立った腕をさする。

「また落ちてた・・・」

寝ていた辺りに座り、傍のベッドに寄りかかる。あくびがもひとつ。目尻の涙をこすって振り返った。
人のベッドで気持ちよさそうに寝ているのは先輩チームメイト付き合ってる人。一人に色んな関係を求めている。
眠る表情は何となく幼い。笠井はふっと笑い、ベッドに乗りあがって彼をまたぐ。

別に男だとかは気にしなくて、付き合うことになった頃は好きでもなかった。もう何でもよかった、サッカーがあれば他に何があって何がなくても。
笠井の重さの所為かうめき声。失礼な、頬をつついてやると嫌そうに顔をそらす。

ねえあなたは知らないでしょう?あなたの所為でこんなに貪欲になったこと。
責任とってもらわないと困るんだから、今日もがんばって。

「・・・俺がこんなに好きだってこと先輩は知らないんだろうな」

好きだよ、普段は言わない言葉を言外に、笠井は体を倒して頬にキスを落とす。
よく見ると小さな傷、昨日の試合で倒れたときの怪我だろうか。お疲れ様、とそこを指先で撫で。

そして深呼吸。

「────三上先輩朝ですよ!起きて下さーい!!」
「〜〜〜〜〜ッ・・・何人の上乗ってんの、誘ってる?」
「ハイハイ馬鹿なこと言ってないで起きる!」
「おはようのキスはー?」
「それが馬鹿なことって言うんです」
「・・・まぁいいか、貰ったし」
「!」
「どうせなら口の方がよかったけど」
「おッ・・・起きてたんですかっ!!?」
「知ってますよ?寝込みを襲いたくなるぐらい笠井が俺のこと好きだってことぐらい」
「〜〜〜〜〜〜!!」

真っ赤になって逃げようとする笠井を引っ張りベッドに押さえ込む。必死で抵抗する笠井と入れ替わって一瞬だけキスを。

「おはよ」
「・・・おはようございます」


明日も明後日も挨拶させてね、それが今日の自信になるから。

 

 


ホントは中学特有の挨拶習慣について書こうと思ってたはずなんですが。あれ?

040430

 

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