秘 密


「・・・・・・」
「笠井?」
「・・・・・・」
「ん?・・・ってお前それどこから・・・ッ」
「先輩の鞄の中」
「いや・・・それは・・・」
「見てもいい?」
「え?」

セリフの理解に時間が掛かる三上を無視して笠井はビデオデッキにAVを押し込む。
三上が読んでいた雑誌が閉じてしまうのも気にせず慌てて体を起こした。ベッドから少し離れたところにいる笠井は、ピンクが基調のケースを一瞥し、適当に床に置く。

「・・・あ・・・あの、笠井さん・・・見るの?」
「見ちゃ駄目ですか?」
「・・・見たいんだったら見てもいいけどよ・・・兄貴から流れてきたもんだからどんな内容かわかんねーぞ」
「まぁそれが三上先輩の鞄に入っている理由はあとで聞くとして」
「今聞いて・・・」

笠井がリモコンで再生を押して、CMが流れていた画面にパッと女性の姿が映った。
瞬間、さしもの笠井も絶句する。

(・・・あンのクソ兄貴!ビデオ巻き戻せよ!)

まさに本番真っ最中の画面に心の中で毒突いて、三上はそっと笠井の様子を伺った。
笠井はすぐに復活したようで、バラエティ番組でも見てるかのように絨毯の上であぐらをかいて両手を後ろにつく。
何だその余裕、
少し悔しい三上は部屋の電気を消してやるが笠井は反応しなかった。
テレビだけを光源にした部屋に、音量と落としたテレビから女の嬌声が続く。
何となく一緒に見ている三上は複雑だ。一応付き合っているという立場なのだから、そうも真剣にビデオを見られても。

「(・・・ちゅうか俺がヤバいんスけど・・・) ・・・・・・笠井」
「・・・でかっ」
「・・・・・・・・・」
「今呼びました?」
「いや、呼んでません」

大丈夫だ、俺はまだまだ発展途上。
それでも少し悲しくなった三上はベッドに伏せる。
笠井はそれを振り返り溜息を吐いた。リモコンを持って立ち上がり、ベッドに乗り上がって三上の背中を跨ぐ。

「せーんぱい」
「・・・何でしょう」
「ん?大丈夫?」
「・・・何が」
「俺今日はちょっと優しい気分なので手伝ったげてもいいですよ」

言ってから軽く三上の後頭部にキスを落とし、こつんと額をぶつけた。風呂上がりの、乾いているけど日中に比べると潤った髪は何となくいい匂いがする。
しばらく考えたらしい三上がゆっくり体をまわす。腰を浮かせ、三上が仰向けになって笠井はまた腰を下ろした。

「・・・何かウラとか」
「ないですよ」

三上の肩がリモコンに触れ、一気に上がった音量に笠井が慌ててテレビを消した。
ふっと真っ暗になった部屋で、目が慣れない笠井はゆっくり三上の胸に触れる。

 

 

「・・・・・・」

隣で眠る三上を見て笠井は溜息を吐いた。
額にかかった前髪を避けて小さくキスを落とす。三上は何も気付かない。

「・・・参ったな」

本格的にホモだ。
小さく口にしてみて、笠井は首を振ってベッドから降りた。

 

 


うん、ね(何)。
一人ぐらい真性がいてもいいじゃないか。

040430

 

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