嫌 い


「新作が入りました」
「「「………」」」

近藤が手にしていたものをわずかに掲げた。書店のビニール袋に入ったそれは、本にもみえる形と大きさをしている。しかし寮生ならわかる、あれはビデオで、そして年齢指定のあるあれで。
そして一気に場は空気を変える。只今より上映会を始める!見たい奴は俺についてこい!大いに盛り上がりを見せて、近藤を筆頭にふざけたい奴らが談話室を出ていった。

「笠井は行かねーの?」
「…俺あーいうの嫌いなんだよ。気持ち悪い」
「変な奴。…行ってきていい?」
「ドーゾ」

俺の負けでいいから、と手札を捨てて、友人もそわそわと出て行った。元より暇つぶしにしていただけのトランプをかき集め、笠井は無意味に繰り続ける。

(…女の人が気持ち悪いんだよ…)
「かーさい、居残り?」
「…中西先輩は行かないんですか?」
「今回の入手経路は俺なの。もう見たし」
「あー、」
「笠井はいっつも行かないよね」
「興味ないんで」
「セックス嫌い?」
「……」
「するの。笠井結構好きなんじゃないの?」
「……嫌いとは言いません」
「ほらぁ」

にやにやする中西をどう振り払おうか。いや…できるわけがない。絶好調のこの人に対抗する術などないのだ。おまけに広い談話室からはふたり以外消えている。畜生、来年からはあんな悪習なくしてやる。

「三上がへたれてたよ?」
「あれは…だって」
「まぁ三上が悪いんでしょ?」
「…だってフェラ嫌いなんですよ」
「あーらら」
「……もしかして三上先輩そこまで喋ってませんか」
「うん」
「〜〜〜〜!」

やっちゃった…!体を倒してソファーに顔を埋めた。このまま悠久の闇に葬って欲しい。

「可愛い〜」
「う〜……中西先輩ずるいよ〜…」
「何でよ。素直でいいじゃん。…そんなに嫌なの?」
「…俺だって、その…されっぱなしってのも嫌だし、」
「うん」
「────ムカつく」
「……」

笑顔で見守っていた中西はそのまま一瞬硬直する。そんな中にのんきに三上が入ってきて、声で気付いた笠井は顔を上げた。

「あ、かさ」
「大っ嫌い」
「「……」」

絶対零度の視線を投げつけ、笠井はすっと出て行った。中西は凍り付いた笑顔のまま三上を見た。そっちも対して変わらない。

「…何したの?」
「聞くな…」

俺は機雷を発射させた。笠井の機嫌は当分悪そうだ。

 

 


すんません。なんかもう、ネタのある生活って素晴らしい。

060616

 

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