ん ?


「はい空振りー!」
「うっせ!」

キャッチャーが笑いながらピッチャーにボールを投げ返した。
校門から車がまた入ってきて三上は汗を拭きながらバットを下ろしてそっちを見る。

「今日車多くね?」
「何言ってんだよ、参観日だろ」
「あ?あぁ・・・俺んとこカンケーねぇから忘れてた。近藤のとこ来るんだっけ?」
「来なくていい〜〜〜」
「楽しみーv」

参観日の時間はまだだがせっかちな親が多いようだ。三上は呆れてバッドを担ぐ。
遠方の生徒も多い武蔵森だがこんな機会でもないと会うことのない家族もあるのだろう、毎年結構親は来る。参観日の続きに総会があるので午後の授業を参観される。 次の時間は何だったかと考えた。
向こうでピッチャーが構えたので三上もバットを構える。かと思えばボールを落とし、こっちへずんずん近付いてきた。

「みみみ三上ッ!」
「な、何だよ」
「あれ!」
「あ?」

振り返れば、昼休みにグランドで騒ぐ生徒たちを何人かの保護者が見ていた。
居るのは主に母親。暑さに日傘を差している。

「何?お前の親でもいんの?」
「ちっげーよ!お前どさくさ紛れに彼女呼んだの!?」
「は?」

また振り返ってみる。
ふっと視線を巡らせて、手を振っている人がひとり。

「・・・・・・うわっ!」
「うわっじゃねーよ!」
「ちょっと、パス」

バットを押しつけて三上は慌ててそっちに走る。彼もすかさずバットを近藤(キャッチャー)に押しつけて三上の後を追った。近藤はそれを更に中西(自称審判)に押しつけ後を追う。

「亮くん」
「な、何してんの」
「えー、来ちゃダメなの?」
「ダメっつか、多実ちゃん・・・ここ何処だと思ってんの」
「学校」
「東京!」
「やだ怒らないでよー、ちゃんと許可貰ってきたんだから」
「三上ッ、」

クラスメイトに制服を引っ張られて三上は息を呑んだ。一瞬首がしまる。

「誰ッ!?」
「・・・・・・多実子v」

ぎゅっと目の前の女性を抱きしめてやれば発狂する。
おもしれぇ。三上が笑っていると追いついた近藤が何だ、と笑う。

「萩野萩野、これ三上のお母さん」
「あ、黙ってろよ近藤」
「は?・・・・・・義理ですか?」
「ちゃんとX染色体貰いました」

近藤があっさりとバラしてしまって三上は残念そうに女性の肩を組んだ。
三上より若干背の低い女性は、確かに近くで見ればずっと年上の女性だ。

「突然変異・・・!」
「悪かったな隔世遺伝で」
「多実子さんは旦那さん一筋だもんなー、どうもお久しぶりー」
「近藤君こんにちは」
「ほんで多実ちゃんは何で東京に?」
「だって亮君今年が最後じゃない、お母さん一回ぐらい参観日見たいもの」
「ダンナはどーした」
「忙しくて駄目だったの。残念がってて、かわいかったわよーv」
「40過ぎたおっさん捕まえて可愛いゆうな」
「え〜・・・人妻でもいいので俺立候補したい」
「やめとけ萩野、既に近藤が玉砕済みだから」
「近藤・・・」
「だって可愛いだろ多実子さん!」

ゆっくり歩いてきた中西がからから笑った。こんにちはー、と朗らかに挨拶をして多実子も同じように返す。

「多実子さん旦那さん置いて来ちゃったの?」
「そう、忙しいから。ホントは一緒に来たかったんだけど入院患者さんがいたから」
「三上んちって医者?」
「獣医」
「じゃあ早く帰ってあげないとね」
「そうね、ちゃんとご飯食べてるかしら・・・」

 

「・・・なぁ、サッカー部ってこんな誰かの親とフレンドリーなの?」
「特別じゃねェ?」
「羨まし・・・」
「落とせるもんなら落としてみろよ」
「・・・三上、それ息子のセリフか?」
「俺が落とせなかった女が萩野に落とせるならって話」
「・・・ちょっとまてお前」

 

 


うちの三上はマザコンです。

040713

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