テ ス ト 前


「眠い」
「寝てくれ」
「・・・・」

中西は顔をしかめて談話室を出ていった。
いやに素直な中西を不審に思いながらも辰巳は視線をノートに戻した。シャーペンを回していた三上が手を止める。

「いいか?」
「あぁ。それで?」
「そんでこっちのxに代入すんだけど、お前の場合は律儀にそのまま代入してるからそっちで計算間違えんだよ、ここで展開しちゃうんだって」
「・・・あぁ、そうか」
「そしたらこの二乗が消えるから」

辰巳が納得した様子で問題を解き直した。三上、と根岸が机を指で叩く。

「これは?」
「あ?・・・これとこれくくって、したらこれが共通因数だろ」
「あ、そういややったなー。ふんふん」

聞きたくなーい、耳に慣れない単語に藤代が耳を塞ぐ。お前も来年苦しむぞー、根岸がそれを冷やかした。
スリッパをペタペタ鳴らしながら中西がまた戻ってくる。誰が見ても眠いんだろうと分かる表情で近付いてきて根岸の隣に座った。ノートを覗いて欠伸をひとつ。

「寝にいったんじゃないの?」
「歯研いてきた。ネギっちゃん待つ」
「まだかかると思うけど」

この通り。根岸が問題集の範囲を指で挟む。

「・・・待っとく」
「じゃあ急ぐな」

ほいほいとノートをめくり根岸は問題を再開した。
これ起きてんの?三上が中西に消しゴムを投げる。中西にぶつかったそれは直ぐ様投げ返され、殆ど本能的な動きに三上は笑った。

「んじゃ先輩方おやすみなさーい、ネギ先輩ガンバ!」
「おう!」

藤代のエールも中西はうっとおしそうに顔をしかめる。ソファにぐったりと体を預けるのを根岸は心配そうに見た。

「先寝てていいよ?」
「・・・んーん、」
「大丈夫か?」

中西は少し体を起こし、頭を掻いて欠伸を噛み殺す。

「・・・終わったら起こして」

少し体をずらし、膝かしてねと中西はソファに横たわる。根岸の膝を借りて。

「・・・・」
「あ、三上これは?」
「・・・ちゅーか・・・それ何・・・」
「膝枕」
「そうじゃねぇよ」
「え、やんない?」
「やんねぇよ俺が誰とするんだよ」

渋沢とか言ったら殴るぞ。しかも辰巳じゃなくてお前か。辰巳は中西を少し見てまた数学に取り掛かる。

「だって辰巳の膝高すぎるんだもん」

俺的に根岸がベスト。中西は完全に寝る体勢になって目を瞑る。

「根岸がいる間ぐらいいいじゃん」
「・・・・」
「だから心配しなくてもこいつ落ちるって」
「三上・・・」
「ヒッデー、外部進学少ねぇんだから応援しろよ」
「だって俺どっちかっつーと中西んが好みだしー?」
「のしつけてくれてやる」
「いらねぇよ」

物のように扱われても中西に気力は残っていない。
ただ煩そうに顔をしかめ、根岸がなだめるように頭を撫でる。

「三上こっちは?」
「・・・因数分解できねぇなら解の公式」
「えっなんだっけアレ!」
「2a分のー」
「え〜・・・まいなすびーぷらすまいなするーとびーにじょうまいなすよんえーしー」
「だからまずその公式使えるように展開してくくる」
「あぁ」
「そして中西撫でるのやめろ!」
「え?」
「無意識なら殴るぞ」
「な、なんでだよ」
「辰巳もなんか言え!」
「これは?」
「・・・このグラフは上に凸だから、って違うだろ?お前としてはコレどうなのよ」
「どうって・・・仲がいいのは今に始まったことじゃないだろう」
「嫉妬とかねーの?」
「そのネタで喜ぶのは中西だけだ」
「辰巳って淡泊」
「・・・三上だって似たようなもんだろう」
「そりゃ笠井だ。俺は散々愛してやってんのになぁ」
「三上ウザがられてるもんね」
「ネギ質問禁止」
「えっごめんなさい!」

とりあえず根岸は謝って、言われた傍からここわかんねぇとノートを差す。

「つかお前は基本からやり直せ!」
「うわっそんな!」
「そんなも何もお前さっきから聞きすぎ!」
「だって早くしないと中西可哀相だろ」
「そいつ部屋に置いてこい」
「う・・・だって俺も一緒がいい」
「・・・お前ってさ・・・」
「うるさいな」
「なんも言ってねぇよ」

三上は呆れて解説を始める。中西が少し呻いて寝返りをうとうとするのを足で止めた。

「・・・つーかさぁ、」
「ん?」
「俺中西は根岸のこと好きだと思ってたんだよな」
「うん好きだよ、俺も中西好きだし」
「俺が言ってんのはそういうんじゃなくてな」
「だから恋も愛も吹っ飛ばして最上級に大好きなわけよ」
「ふーん・・・んじゃキスとかねぇの?」
「ねぇよ」
「ふーん」
「・・・三上ッお前中西に手ェ出してッ」
「出すかよ!なんだよ、辰巳はアリで俺はダメってか」
「うっさい」
「すいません」

中西の一声に、思わず立ち上がっていた三上は腰を落とす。
お前らまだやってんの?歯ブラシをくわえて談話室を覗いた近藤が呆れて根岸を見た。
根岸はちらっと膝の上の中西を見る。眉間に寄せたしわ。

「・・・残り明日にする」
「・・・そうだな、中西そんなんだし」
「あー根岸、お前な、時間掛けすぎだからスピード上げろ、かつ正確に」
「・・・頑張ります・・・」

根岸が帰るぞと中西の頭を叩き、のそりと体を起こして欠伸をかみ殺す。
まだ残りの1問を解く辰巳と目が合った。何となく中西はそれを見返す。

「おやすみ」
「・・・お休み」

 

 


書いてる途中でわけがわからなくなってきたものでした。

040907

 

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