友 達


「・・・何その話題・・・」
「いや、俺らだってそう毎日毎日エロい話ばかりしてるわけじゃないのよ」
「ふーん・・・じゃあこいつはいらねぇな」
「ごめんなさい貸して下さい」

三上は笑いながら黒いビニール袋に包まれたそれを近藤に渡した。
見る?と渡された辰巳が中を覗き、興味なさそうにそれを返す。ピンクの可愛らしいビデオだ。

「初恋がどうしたって」
「だから初恋がいつかって話」

お前も座れ、と前を指され、三上は近藤をソファから突き落としてそこに座った。
文句を言いつつ近藤はその場であぐらをかく。遊びに来ていたクラスメイトがビニール袋の中を見て三上を見た。

「・・・いや、それ兄貴のな」
「ていうか次借りていい?」
「近藤に聞いて」
「中身見た?」
「笠井と一緒にな」
「笠井と!?」

近藤とクラスメイトが一緒に驚くが、事情を知っているのと知らないのとでは驚くニュアンスが微妙に違う。
本日は読書中ではないらしい辰巳も呆れて三上を見た。

「いや笠井が見るって言ったんだからな?俺が強いたわけじゃねーよ」
「えー、笠井ってそんな子なの?時々来る大人しいのだろ?」
「・・・そりゃ藤代と比べれば大人しいけどな」

何があったのやら。どっしりと溜息を吐く三上を見て近藤が笑う。

「あぁそんで、初恋の話よ。三上の初恋っていつ?」
「・・・それ楽しい?」
「いいから」
「初恋〜?・・・えーと・・・3歳?」
「うっわマセガキ!相手は幼稚園のセンセーとか言うなよ」
「っつーかおかん」
「・・・ていうか三上の母さんかなり美人でさぁ、この間来たとき元カノとかかと思った」
「マジでッ!?三上ッ俺に是非お母さんの紹介を!」
「・・・赤坂ほんっと年上好きな・・・言っとくけどうちのおかん高校からおとんと付き合っててそのまんまゴールインだからベタベタだぞ」
「えー、それって初恋で?」
「おかんもおとんも」
「・・・そんな純愛でなんで三上生まれたんだろうなぁ」
「悪かったな隔世遺伝だっつの」

三上みたいなじーさんって強烈!
三上がビニール袋を回収しようとして近藤が慌てて引き留める。

「何で辰巳が混ざってんだ?」

ビデオを服の下にしまった三上を気にしながら辰巳は顔をしかめた。
こいつに、とクラスメイトを差す。辰巳は今は隣のクラスだが、彼とは去年同じクラスだ。

「そもそも辰巳の初恋の話を聞こうとしてたんだよ」
「あ、そりゃ聞きてぇな」

縋り付いてくる近藤を引き剥がしつつ、三上は辰巳に話せと急かす。

「・・・初恋って言われてもな」
「えーでも辰巳って初恋とかまだそう。女と付き合ったこととかないだろ?」
「いや」
「・・・・・・」

否定の言葉に近藤も一瞬ビデオを忘れる。
てっきり中西のことで口を濁しているのだと思っていた三上も、そうではない様子にじっと辰巳を見た。

「・・・いや、でもあれは付き合ったと言わないのかな」
「・・・どういう状況だったんだよ」
「家庭教師して貰った間の、1週間」
「家庭教師ッ!?なにそれッいいなぁッ」

赤坂君興奮しすぎ。
三上が冷やかすと彼はあっさりそれを肯定し、だってふたりっきりじゃんなんて一人で盛り上がる。
いい加減煩いので三上も近藤にビデオを返した。それより辰巳だ。

「でもそれ俺も初耳なんだけど? その家庭教師と何処まで行ったのよ辰巳は」
「どこまで、」

絡んで肩を組んでくる三上の言葉に辰巳が少し考え込んだ。
微妙な沈黙。

「・・・えーと・・・それは何?どうして付き合うことになったわけ?1週間の」
「彼女の方が男と喧嘩中で」
「うん」
「・・・・・・成り行き?」
「俺に聞くな」
「でもその1週間後に仲直りしたから」
「それでその1週間の間に辰巳君は何を教えて貰ったのかな?」
「・・・・・・」

反対側から赤坂が絡む。
言う気のないらしい辰巳に三上はすぐに諦めて、

「でもそれってお前の初恋だったわけ?」
「・・・違う、だろうな。好奇心?」
「辰巳ってそう言う奴だったんだ・・・」

何となくショック。
近藤が呟く。なんとなく気まずい辰巳は座り直した。

「じゃあ初恋は? 今の?」

今の、を強調して三上が意地悪く聞いてみる。
たまたま今の、が談話室に入ってきて三上は顔を向けてみた。辰巳がそっちを向く。
目が合った中西は話題が良く分からないまま手を振ってみた。あのメンバーに辰巳とは、どうせ辰巳がいじめられてるんだろうぐらいにしか思わない。

「・・・・・・ッ・・・」

辰巳が頭を抱え、何事か分からないクラスメイトが三上を見る。
近藤が三上の視線を辿り、中西を見つけて納得したように溜息を吐いた。

「最近仲良いと思ってたらお前らそうだったの?」
「い、いや近藤違うんだ」
「そっかー、まぁ俺はあいつが大人しいならいいんだけどね」
「何だよー、辰巳今誰かと付き合ってんの?」

見事に蚊帳の外のクラスメイトから辰巳を守るべく、近藤は仕方なく立ち上がった。
手にビデオを持って。

「行くぞ赤坂ー、なおみちゃん観賞だ」
「おぉしッ」

お前の将来が少し心配だ、
三上はお父さんの気分でクラスメイトを見送る。

「・・・辰巳、お前な」
「・・・・・・」
「迷ってる時点でそれは初恋じゃないのか?」
「・・・・・・」

やだなぁ。
しばしの沈黙のあと辰巳が呟いた。

 

 


三上の友達は頭の悪いノリがいい。ノリですよあくまで。たまにバカが混ざってる、みたいな。
近藤好きー
(敢えて辰巳には触れません)

040430

 

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