よ ろ し く


「中西と同室…!!」
「あら三上イヤそーね」
「イヤに決まってるだろうが。何で渋沢一人部屋なんだ!?」
「1年代表決定だからじゃない?辰巳誰と一緒〜?」
「近藤」
「ならダイジョーブ!」
「……」

 

武蔵森学園高等部、サッカー部寮は本日より新1年生を迎え入れる。
掲示板で騒いでいるのは彼らだろう。

「1年ってかわいーなー」
「そうか?…あぁ、お前は高等部から入ってんのか。あいつら持ち上がりだからなー」
「あ、じゃあお前らはあいつら知ってんだ」
「うーん、まぁな。友として忠告しとくけど、あの辺にはあんまかかわるな?」
「え?」
「あッ 遠山先輩発見!」

そして走ってくる中西を見て、2年遠山は溜息を吐く。
勢いに任せたままのタックルにどうにか耐え、自分より大きな後輩の頭を撫でた。

(でか…)
「中西またでかくなった?」
「遠山先輩ちっちゃくなった?」
「なるかッ!」
「でも先輩丁度よかったv」

がし、三上が遠山の腕を捕まえる。はっとして中西と三上を見比べ、ガクリと肩を落とした。

「先輩寮内の案内頼むわv」
「1階の鍵かからないところだけでいいからv」
「いやー俺そんなの知らないなァってね?」
「アラヤダ遠山先輩の武勇伝は中等部にも届いてるのよv」
「頼むよセンパーイv」
「うぅ…」
「ね、遠山先輩?俺に逆らっちゃってイーの?」
「ううう…お前ら嫌い…」
「先輩大好きーvv」
「……」

連行されて行く遠山を、友人はただ見送ることしか出来なかった。

 

 

 

「ア、さっき遠山先輩と一緒にいた人?」
「あ、」
「中西です」
「あぁそうだ、俺は岸谷」

自販機の前で出会った後輩。まだ決めかねてたので先を譲って、何となくその様子を見る。
…さっき自分のルームメイトの遠山に、中西だけは気をつけろと切羽詰った様子で注意を促された。彼がその中西だろうが、零期正しいし第一印象で悪いところはない。

「…あ、もしかして遠山先輩何か言ってました?」
「あ、」
「アハハ、いーですよー遠山先輩とはしょっちゅうふざけて遊んでたんで」
「へえ」
「岸谷先輩はポジションは?」
「俺はFW、まだ控えだけど」
「あ、凄い」
「いやいや……!?」

ぞくり、と。
何かを感じて記したには慌てて振り返るが、さっき見かけた後輩が数人、雑談をしながら歩いているだけで自分たちを気にしている人の目はない。

「…?」
「あ、辰巳ー!」

呼ばれてこっちを見た辰巳が、岸谷に軽く会釈しながら中西に近付く。

「先輩FWだって、あんたと一緒」
「…そうですか」
「あ。君が高さの辰巳?ホント高いね」
「どうも」
「…」

言葉の端々が、厳しい。しかし表情が変わらないので感情は読めず、遠山に聞いていた話だと彼は寡黙であるとのことだからこんなものだろうか。
しかしふと目が合った瞬間に、またぞくりと悪寒がする。
それじゃ、と中西が行くのに辰巳もついていって、呆然とする岸谷の方を誰かが叩いた。振り返ると同情の表情をした三上と近藤。

「多分 遠山先輩の言うニュアンスと違うけど、マジで中西には気ィつけた方がいーっスよ」
「…え?」
「辰巳自覚なしでやってんスよねー、怖い怖い」
「しかも先輩ポジション同じでしょ、辰巳と」
「コエー」
「……」

春。
腕に立った鳥肌に、岸谷は無言で腕をさすった。

 

 


うふふふふ(?)
遠山先輩が全ての発端というどうでもいい設定があったりなかったり。

050316

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