優 勝


混戦、混戦、混戦。
みっともない試合に桐原が吠える。俺らも切れる。
目標は同じ郵相だけど、目指してるものがきっと違う。

 

「俺」

近藤は顔をしかめて。

「高校行ったらサッカーやめようかな」

そんで可愛い彼女とか作ってさ、
三上は近藤を見て、それから顔を戻してスパイクを脱ぐ。試合お疲れ様。
簡単に砂を払うと渋沢が外でやれ、と三上を小突く。

「やめたきゃやめれば?」
「うわテキトー」
「適してるの方の適当だかんな、引き止めて欲しいならそう言えよ」
「そういうわけじゃねぇよ」
「やめたかったらやめろ。でもむかつくからってやめんな」
「・・・・」
「遊びでやってたっつーんならどんな理由でやめてくれてもいいけどな」
「違う」
「俺に言うなよ」

着替え終わったメンバーが部室から出ていく中、ふたりだけは手を止めていた。
ペットボトルの水を三上が頭から被り、渋沢に小言を言われる。

「ただいまーっス!!」
「藤代帰ってなかったのか?」
「もー誠二のスタミナ信じらんない・・・」
「笠井・・・巻き添えか・・・」

部室に入ってきた藤代に続いて笠井がぐったりした様子で戻ってきた。タオルで拭いきれない汗が首を伝って背中に落ちていく。

「今日の練習まだ楽だったじゃん」
「俺は優勝疲れが取れてないの」
「えー、でもタクも楽しかっただろー」
「楽しいって言うか・・・なんか決勝より緊張したよ、監督とパス練とか・・・」
「嘘ッ桐原ボール触ったのか!?」
「だから三上先輩もさそったじゃないっスかー」

近藤が立ち上がって窓の外を見てみる。
グランドの隅でリフティングをする桐原。軽くホラーだ。

「げぇー、あいつどうなん?パス練って・・・」
「凄いっスよ監督、バシッて感じ」
「わかんねーよ」
「正確ですよ」
「水野とパス練したときの話してくれたよね〜、やっぱ水野とやりたいんだよ監督〜」
「誠二の世話見たくないだけじゃないの?」
「しつけぇなあのジジィ・・・」

三上が顔をしかめて頭をかく。

「ていうか三上先輩達使いにくいんだってー、近藤先輩とか」
「俺?」
「ウマの合わなかったチームメイトに似てるらしいです」
「・・・・・・」
「何だかんだいって一番優勝したかったのあの人だし」
「監督凄いよねー、俺多分私情でチーム作っちゃうし〜」
「誠二の私情でチーム作ったら凄いことになりそう・・・」
「えーでもさァ、俺だったら水野入れても三上先輩ださないもん。どうせなら近藤先輩かな」
「はぁ?」
「だって近藤先輩、監督の嫌いな人に似てるんでしょ?俺だったら使わないっスよ〜」

「話の続きは帰ってしてくれるか?」
「わ〜キャプテン待って〜!」

急いでシャツを脱ぐ藤代に続いて笠井も慌てて着替え始めた。
ベタベタの体に嫌悪しつつ、帰ったらソッコー風呂だと呟いた。

「別にさぁ、監督近藤先輩が嫌いとはいってなかったと思うけど」
「そーだっけ?」
「だって嫌いな人の心配しないと思うよ」
「・・・心配?するかよアイツが、優勝の後怒鳴られてんだぞ俺」
「・・・それうちの父親と同じだと思うんですよ。ゆうしょうにゆうしょうを求めるなって」
「何それー」

藤代の間の抜けた声に笠井は一瞬考え、ミーティング用のホワイトボードのペンを取る。

「優勝に有償を求めるな。
 勝ちは勝ち、それ以上でもそれ以下でも何でもなくて、見返りが欲しくて勝ちたいのは見当違いってこと」
「わかんない」
「・・・お前の馬鹿さも極みだな」

三上の言葉に藤代は顔をしかめ、だって、と続ける。

「勝ち以外に何 欲しいモンがあるんスか」
「・・・・・・」

それは。
近藤はぎゅっと手を握った。

 

 

 

「俺は近藤先輩の欲しいものが分かりますよ」
「・・・笠井」
「俺も一緒だったから」

未だに父親は苦手ですけどね、笠井は笑う。

「褒めてもらいたいだけなんですよね」
「・・・まさか」

ひとこと

ひとこと、あいつは怒鳴る以外に何か俺に言えなかったんだろうかと、思う。
言ってることが正しいのは分かってる。

「先輩だって監督のこと嫌いじゃないんですよね」
「・・・嫌いだよ」

 

 


大昔に書いてたんですけどねェ・・・。強制終了にめげず頑張って打ち込みましてよ。

040803

 

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