「たりぃー・・・」

「おい三上ッ!サッカー部がサボってんじゃねぇよッ!!」


夏 の 水 と ボ ー ル と 君


三上には転がっているとしか見えないドリブルをされているらしいボールを目で追って、三上は仕方なく歩いた。
無駄に動いて体力を消耗するのも嫌だ。黄色い歓声は別に要らない。

「せめて辰巳と同じクラスだったらもうちょいましなプレイ出来んだけどなー」
「わぁるかったな素人で!森の10番にはとても役に立たないメンバーで!」
「いやまさかそんなこと」
「棒読みだぞコラ。 渋沢を見ろ!あんなに張り切ってるじゃねーか!」

三上はゴールを見た。校庭のゴールはサッカー部専用のものと比べると差は明らかだ。
それでもゴールネット前に立つ渋沢の迫力は変わらない。

「どんどんボール回してこい!」

「いやキーパーまで下げてどうすんだよ・・・」
「アレだろ」
「あぁん?」

指で指された方向を、三上はいぶかしげに見た。
校庭の周囲を回るように、次水泳だと思われる一行がグランドを気にしつつ歩いている。

「・・・!」
「だっアホかっ戻れ三上ー!」

三上はこの試合の中で最高の走りを見せた。
見付けた愛しの姫君へ、試合もそっちのけで走っていく。

「・・・あれー三上だ」
「よう、次プール?」

たまたま傍に居たファンを卒倒させつつ、三上は何処か嘘臭い笑顔を向けた。

「三上はー?何やってるのー?」
「俺?俺は球技大会」

さり気なくから渋沢が見えない位置に立つ。
三上が抜けても普通に試合が進行しているのを見ると、三上がどれほど試合に貢献していないかが判った。

「おぉ。三上サッカー?じゃあ三上のクラス絶対勝つね!ね、渋沢!」
「・・・え?」

最後に付け足されたかの様に言われた言葉が三上に向けられたのではない事は火を見るより明らかだ。
三上がおそるおそる後ろを振り向く途中に、ぽんっと肩を叩かれた。

「あぁ、三上なんか居なくても俺がゴールを守っている限り負けはせん」
「そっかぁ、頑張ってねー」
「さて、行くぞ三上、お前がボールだ」
「嘘ッ!?」
、急がないと水泳遅れるぞ」
「あ!大変だ急ごうちゃん。三上じぁねー」
「俺がボールになることより水泳優先かよ・・・」

哀愁漂わせながら三上がいつまでも手を振る渋沢を蹴倒した。

「・・・あいつらバレーにしてた方か勝てたかもしんねぇ・・・」

体育委員の涙がグランドに落ち、同時にゴールネットが揺れた。



只立っているだけでもじわりと汗が出てくるこの季節、武蔵森では球技大会が行なわれていた。
今日は3年。男子はサッカー・バレー、女子ドッチボール・バレーの各二種目。
辛うじて、三上のクラスは勝ち上がっていた。

「三上!次こそ仕事しろよ!」
「俺熱血ヤなんだよなぁー・・・」
「熱血じゃないだろ!」

三上はドッチボールにいちいち上がる、悲鳴にも似た声の方を見た。
赤いボールが飛びかって、コートの中は常にパニック状態といっても過言ではない。

「・・・俺もドッチがよかったな・・・」
「え?」
「思う存分渋沢攻撃出来んのに・・・」
「・・・・」

味方だろうと何だろうと攻撃する気がして、哀れな体育委員はそれだけを有り難く思った。

「次何分からだ?」
「えーっと・・・20分から4組と」
「そっか」

三上は立ち上がって歩きだした。

「おい何処行・・・って決まってるか・・・」




トンと底を蹴って、は勢いをつけてプールから半身を出す。
ひょいと片足を上げて何気なく顔を上げると、目が合った。

「みかみ?」
「よぉ」

三上は片手を上げて笑顔を見せた。
何で、と言いかけてが思わず手を離し、水飛沫を上げてプールの中へと舞い戻る。

「おいっ大丈夫か?」
「ぷはっ・・・ぁーびっくりしたぁー」

身軽そうにがプールサイドに上がる。足跡を付けてフェンスに近付いた。

「サッカーは?」
「負けるわけねぇだろ?」
「おぉ、おめでと」
「俺のお陰で勝てたんだっ」
「どあっ」

突如三上の横に渋沢が飛び出した。
何事もなかったかの様に笑っている。

「ふーん、流石渋沢だねー」
の応援があってこその勝利だ!!」
「別にしてないけど」
「ってーかテメェ何処から湧いた!」
のあるところ例え火の中水の中、スカートの中にだって現れる!」
「・・・洒落にならんから止めろ」

途中でが行ってしまったのに気付かない。
ふと前を見るとが居なくなっていた。

「・・・アイツ水泳得意って言ってたな」
「おっが泳ぐぞ!」

ふたりはフェンスごしにプールを覗く。
それは例え、武蔵森の守護神だろうが司令塔だろうが変態行為の内のひとつでしかない。
しかし、それも彼らならば何となく許されてしまい、注意するものは居なかった。

の頭が水の中へ沈み、しばらくすると白い腕が交互に水面を割る。
時折顔を反面上げて息継ぎをした。
同時にスタートした隣のコースの人と差をつけては水から出る。

「おおっ凄いぞ!綺麗なフォームだ!」
「ひひっ、泳ぎはちょっと自信ありー」

再びが片腕をガッツポーズの形に作って、三上達の前に来る。
プールサイドの高さは三上の顔が丁度出る高さ。三上は濡れた脚を正面に見る事になる。
水を含んだ学校指定の水着から、水が太股を伝った。

「・・・三上ー?」
「え、あ、何でもねぇ」

が三上の正面にしゃがんだ。
コレで胸があればナイスアングルなのに、と三上がこっそり思う。

「・・・お前ほんっと胸ないなぁ」
「煩いなー」
「牛乳」
「嫌い」
「お前ちったぁを見習え!お前好き嫌い多すぎンだよ!」

渋沢が力一杯三上を押し退けての前に立つ。
が三上が消えたことにも気付かずに渋沢に話しかけた。

「渋沢はどれぐらい泳げるー?」
が望むならば200海里も泳いでみせようっ!」
「別に望まないけど」
「つか邪魔ッ」

三上が渋沢に蹴りを入れる。
ついでにどこかから持ち出した梱包用ロープで荒っぽく縛り、渋沢を適当に転がした。

「じゃあ夏休み一緒に海かプールか行かねぇ?」
「ホント?やった。アタシひとりじゃ遊びに行かせてもらえないんだ」
「それなら俺がフィジーにでも連れていってやろうッ!子どもはふたりっ!そこに永住しようじゃないか!!」
「赤道付近かよ」
「そんなお菓子不味そうなトコ行かない」

は渋沢を一等両断する。
まだぐるぐる縛られたままの渋沢を三上が再び転がした。

「部活あるから結構日ぃ限られてくっけど大丈夫だよな」
「うんー、暇だよー」

嬉しそうに笑うに三上は内心ガッツポーズを決めた。
パチッと、お馴染みのと言っても良い音がして三上が向くと、どうやってロープから抜けたのか、渋沢が使い捨てカメラを構えている。

「いっぺん死ねッ」

渋沢は今度は三上の攻撃を避け、ガッと飛び上がってフェンスを掴む。
そのままフェンスを登りきってプールサイドに着地した。非難とも歓迎ともつかない悲鳴が聞こえる。

「どうしたの?」
「近くの方がもっとよくが撮れるだろ」
の写真撮ってどうするの!」
「照れた顔もまた」
「撮んないでよっ!」

三上が続いてフェンスに掛けた指を、渋沢がことごとく離していく。
三上を背にして話しているのに、音をたてなくても渋沢は攻撃してきた。

「ちょーっとキャプテン、ちゃんオンリーならいいけど他の人も写るからやめなよー」

不意に聞き慣れた声がして三上と渋沢がそっちを向く。
青と白のビーチパラソル、白いテーブルに同色の椅子。
その椅子に、膝の上に女を載せた・・・

入ってたら金払って貰うからねー」
「なッ・・・中西お前何してんだよっ!!お前バレーだろっ!?」
「うん、ビーチバレー」
「ねーvv」
「ボールもメンバーもナシでか?」

中西の膝の上に座った女が相槌を打つ。
みんなと同じスクール水着なのにも関わらず、そう思わせない雰囲気を纏っていた。

「あ、ちゃんそんなトコに居たんだ」
ちゃん俺の膝はそんなトコか?」
「三上先輩こんにちわーvv」
「・・・おう、久しぶりだな」

渋沢が油断した隙に、三上がフェンスをよじ登る。
の友達で、中西の彼女。
最強と言う言葉が正に相応しく、恐ろしいまでのマイペースカップルだ。
堂々としたビーチパラソルがそれを物語っている。
三上の登場に新手の悲鳴が加わった。

「イヤーッ嘘ッ!?三上先輩の彼女ってマジでさんだったのッ!?」
「ありえんっ絶対有坂さんの方が可愛いっ!」
「アタシの三上先輩がっ!」
「何を言うッは俺のモノだっ!!」
「てめぇは消えろッ!」

クリーンヒットした三上の蹴りが渋沢をプールに沈めた。





「おいっ誰でもいいから前線俺と位置替われ!」

「どーしたぁ?」
「命に関わんだよっいいから替われッ」

渋沢がボールを手に目を光らせているのを見て、妙に納得して大人しく三上と位置を替わる。
もう三上に試合の勝敗は関係ない。只渋沢から逃げるのみ。
ところが相手は三上・渋沢のいるチーム、という事でいやに気合いたっぷりだった。
たまたま彼等に恨みのある者が集まっているらしい。
打倒渋沢!
打倒三上!
それぞれの思いを抱えて4組一同グランドに立つ。
先の試合でポジションも力量もサーチ済み。自信はたっぷりだ。

「・・・ってアレ?」
「三上がFW?」

渋沢の方も近くのDFにポジション替わらないかと持ちかけていたが、流石にキーパーは無理だった様だ。
彼等の自信は一気に自信をなくす。

「あれー、三上前出てるよ」

叫んだわけでもないの聞こえた声に三上も渋沢も反応する。
それに気付いた中西が笑った。

ちゃんポジション覚えたの?」
「ちょっとだけねー、教えてもらったのー」
「ふーん、三上先輩FWも出来るんだ」

の隣に笠井が立つ。
まだ髪に水分を含む笠井は目の保養というか目の毒というか、尋常ではないオーラを放っていた。

「ホラまだ髪濡れてるじゃん。ちゃんと乾かさないと風邪ひくよ、ただでさえ偏食なのに」
「むーっ自分でやるー」
「出来てないから言ってるの!」

が首に掛けていたタオルを手に、笠井がを押さえ付ける。
無理矢理ながらも、は大人しく笠井に任せて体の力を抜いた。

「あーっ中西先輩アタシもーっvv」
「いいよー。それでさっきの話だけど、ちゃんにサッカー教えたのって笠井?」
「そうですよ。誰かさんが物覚え悪いから時間掛かりましたけど」
「だからだよねぇー、笠井とが付き合ってるって噂あったの」
「そんなのあったの?」
「だぁってアタシ何度も聞かれたしぃ〜」
「あれ?アタシと竹巳付き合ってた?」
「バカ・・・俺とは只の幼なじみです」

笠井が脱力して手を止めた。
中西は笑って続ける。

「だからちゃんが三上の彼女だって2年に流れてなかったんだ。3年はみんな知ってるよ、渋沢のお陰でねー。 ハイ乾いた!」
「ありがとーっ先輩大好きvv」
「俺もー」
「・・・飽きないね中西先輩・・・もこんなもんかな」

笠井がにタオルを返した。
直ぐさま三上がを抱き締める。

「・・・って何で三上先輩が居るんですか!!」
「何でって中西もいるじゃねーか」

珍しく声を荒げた後輩に、さも当然と言わんばかりの表情で三上は吐き捨てる。
が中西先輩は特別だよねー、と中西にゴロゴロと甘えるように抱きついた。

「貴方は試合中でしょ!」
「ンなのどーでも良いんだよ、めんどくせーだけだっての」
「・・・三上最近渋沢化進んできてない?」
「何か言ったか中西」
「聞こえてなかったならイイでっすv」
「み、三上、痛い」
「あっ悪ィ」

の訴えに三上は慌てて力を緩めた。
ふとの正面に立ち、おもむろにブラウスの襟元から手を差し込む。
笠井が面食らう中、中西とは平然としている。寧ろ眼中に入っていないようだ。
三上の手はの肩、ねじれていた下着の肩紐を直した。

「・・・お前ほんっっと胸ないなぁ・・・」
「そんなしみじみ言われても・・・」
「ついでにお前ボタン掛け違えてる」
「アレ?」

一つ直しては一つ外し、と三上が地道にずれたボタンを直していく。
勿論ブラウスの中が周囲に見えないための配慮だが、三上にはしっかり見えている。

「お前ホントにと同じ女か?」
「えー、ちゃんはでかすぎでしょう」
「どんぐらい?」
「んーと、3つ目」
「C?」

三上がを見る。
標準体型よりやや発達したと、やや劣る
色んな意味ででこぼこコンビだ。

「まだそんなにないって。こないだ買ったの流石に余ったわ、まぁそのうち使えるから良いけどねー」
「えー?Cぐらいあるっしょ」

ポン、と簡単に中西がの胸に手の平を当てる。
ピンクの下着が透けるそこを、掴んでいる気がしなくもない。

「でもまだまだおっきくなるよねー、俺がするからv」
「やぁだ中西先輩のエッチーvv」
「・・・・・・・・」

何を考えたのか、三上も同様にに触れる。
が何が起きたのか理解する前に、三上はそこから消えていた。

「・・・アレ?三上?」

ワンテンポ遅れてが視線を巡らせる。
右方向に三上が倒れていた。
傍には地面に深い穴を開ける勢いで回転しているサッカーボール。おそらく凶器。

「みか」
、無事かっ!?」
「あっ渋沢・・・三上が」
「良いんだ、コレは有益な殺生だ」

興味を引かれた笠井が三上の様子を見に行く。
初めは遠目に見ていたが、ついには傍まで行ってしゃがみ込んだ。

「・・・、教室戻ろう。もうすぐ授業始まるしね、それにもうすぐ警察来るだろうから」
「け、警察!?竹巳何があったの!?」
「(アンタの目の前で殺人事件がね)
 取り敢えずややこしくなる前に帰ろう。次数学だっけ、あのセンセー煩いから急がないと」
「う、うん」
「じゃあねー中西先輩v頑張ってねっ」
「うん、のために頑張るねv」
「やだっもうvv後でね〜」

笠井に引っ張られるように帰っていく
バカップル代表みたいな会話をしながら別れると中西。
・・・何て切なく呟いてみる渋沢。
ピクリともしない三上。



哀れな体育委員は泣いた。

 

 


・・・・・・痛ッ・・・。
スイマセン。三上さん誰ですか?三上まで変態化進んでしまった。何か要所要所エロいのは気の所為です。
寧ろメインは中西な勢いでお願いします。そしてはハイスコアのめぐみ目指してみたんですがどうなんでしょうか。

ひとりビーチバレーの中西先輩が見たい。

020721

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