真っ白な冬がやっていた。

頬を真っ赤にしてがグランドで雪だるまを作っている。
窓からそれを見ている三上を見つけた笠井が呼ぶが、勿論三上は降りる気もない。
巻き添えを食ったらしい笠井はきっと寒い寒いと連呼している。
といっしょに雪だるまを作っている笠井の後頭部に雪玉が飛んだ。犯人は藤代。
少し離れた場所にあった大きな雪だるまが突然動いた。
かと思えば中に入っているのは渋沢。流石のも驚いて硬直している。

「・・・アホだ・・・」

風邪引いてもしらねェぞ。
そういう三上がくしゃみをした。


C  o  u  n  t  D  o  w  n


「・・・いき しろい」
「さっびー」
「うへへ、寒いね」
「雪、降ったしなぁ」
「うへへ」
「・・・ガキ・・・」

ざくざくと雪を踏み締めて歩くを見て三上は溜息を吐く。
昨日降った雪が久しぶりに積もった。
足跡のない場所を踏めばざっくりと足が埋まってしまう。お陰で歩くのが遅いを引っ張るのに三上は大変だ。

「お前、雪ぐらい珍しくねぇだろ」
「うふふ、だってこんだけ積もったの久しぶり。あ、雪だるま発見!」
「・・・転け、」

んなよ、と続けたかったが既に遅い。
踏み出したがずるっと足を滑らせた。辛うじて転けるのは免れたが、足を戻すのに時間が掛かる。
溜息。三上は溜息を吐いた。

「ゆきだるまー!」
「ちったぁ懲りろよ」

懲りずに雪だるまに向かうにもう溜息も出ない。
誰が作ったのか分からないが小さな雪だるまは余り綺麗ではないが、それでも石と木で顔がつけられている。

「あーいいなー雪だるまー。三上作るー?」
「つくんねぇよ。お前昼休みに手袋びしょびしょにして作ってんだろうが」
「あー、うー、じゃあ早く帰って乾かす!」
「ガキ・・・藤代とかと一緒にやれよ」
「藤代は雪合戦するからヤダー」
「じゃあ渋沢」
「渋沢ひとりで作っちゃうんだよ、つまんない」
「じゃあひとりで作れ!」
「いじわるー」

がざかざかとまた歩き出し、三上はゆっくりその後をついて行く。
寮の周辺は車の通りが少なく、生徒の通学で道路の雪は大分溶けたものの凍っている場所も多い。

「転けんなよ!」
「おう!」

頼りにならない返事だ。

 

 

 

「みかみー」
「・・・よお」

もうすぐ門限だというこの時刻、ひょこんとが寮に顔を出す。
三上は一瞬顔をしかめ、それでもを部屋に入れた。寮に入れたのは誰だかしらないが殆ど顔パス状態だ。
ビニール袋を下げていて、中には柑橘類がごろごろ入っていて少し重そうに見える。

「かぼちゃ食べた?」
「・・・食ったけど、煮物」
「あー・・・そうかー。そうだよね、寮母さんかぼちゃぐらい出すか」
「何だよ」
「まぁいいや。あのね、コロッケ作ったの食べる?」
「・・・あるなら食うけど。なんでかぼちゃ?」
「知らないのー?冬至だよーかぼちゃを食べるんだよ」
「何で」
「風邪引かないの。三上去年ひいたっしょ」
「・・・そうだっけ」
「おうとも」

一旦ビニール袋を床に置き、はその中からアルミホイルに包まれたコロッケを出した。
銀色のボールが1個2個3個。数は適当だろう。

「・・・あ、じゃあゆず湯は?」
「は?」
「お風呂まだ?」
「まだだけど」
「はいじゃあゆずもあげるー。いっぱい貰ったんだよ」

ついでにぼろぼろとゆずも幾つか転がした。ビニール袋の中身はゆずらしい。
黄色に近い皮のゆずは、みかんとは違って少しでこぼこしている。

「それどうすんの」
「お風呂に浮かすの」
「ふーん・・・」

そう言われれば家では昔そんなことをしていた気がする。
いちいち覚えてない三上は何となく感心してを見た。

「三上去年風邪引いたかんね、今年は引かないように」
「・・・どーも。つーか既に引きそうだけど」
「え、大丈夫?」
「雪だるま作りに手伝わせたお前が言うな」

へへ、とは誤魔化すように笑った。

「んじゃ、お大事に」
「帰んの?」
「うん。竹巳にゆず渡しに来ただけなんだ」
「送る」

軽くなったビニール袋を持ち上げるを見ながら三上は立ち上がり、上着を取って羽織る。
部屋に転がされたゆずやコロッケを取り敢えず全部机の上に置いた。

「いいよー、風邪気味なら。もう門限っしょ」
「いいんだよ。うちよりお前んとこの寮の方が厳しいだろ」

送る。
三上がを捕まえて部屋を出た。

「・・・三上」
「何、」
「ゆずねー、あんまいじると種とか出てくるから気を付けてね」
「・・・藤代にやられそー」
「あはは、やるかもねー。竹巳のとこ持っていったら目がキラキラしてたから」

玄関で靴を履きながらは笑う。
かがんだときに足元に落ちたマフラーを三上が巻き直し、の首の後ろで結ぼうとする。

「あ、だめ」
「何だよ」
「これは風邪っぴきに貸したげる」

背伸びをしたが三上の首にどうにかマフラーを回す。

「・・・・・・」
「風邪ひかんようにね。部活もあるし」
「・・・お前は俺の親かっつの」
「あたし三上のお母さん?」

くすくす笑って、はドアを押し開けた。

外は雪が街頭で光っている。
もう大分日の落ちた道を見て、三上はやっぱり出てきて正解だと思った。

「・・・さっぶー」
「もっと雪降らないかなー。スキーできるぐらい」
「降ってたまるか。風邪引かなくてもサッカーできねェじゃん」
「なるほど」

ざくざく。
はしつこく雪を踏んで歩き出す。

「早く温かくなるといーね」

 

それは

三上は一瞬息を止めた。
それは同時に卒業だけど。

 

 


冬至の話を書きたかったのに雪の話になった。まあいいか。
三上夢を書くのは久しぶりじゃない筈なんだけどなぁ。

031223

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