生 徒 手 帳


「・・・・・・」

あー、やなもん拾った。
生徒手帳落とすなんて下手なこと済んじゃねェよ馬鹿野郎何処のバカだあぁ?
生徒手帳の写真なんて大概見たくないモンだけどそれを敢えて見てやる。

「・・・しかも男かよ・・・」

女子棟だぞここは。
何処の色ボケだ。女子棟に忍び込んだか?彼女にパクられたか?
仏頂面の写真の男。ゆっちゃ悪いが不細工だ。写真の所為か?
・・・ん?小さく切られた写真が挟まっている。

「・・・こっちも男・・・」

・・・・・・何だか楽しそうな気配がする。
面倒だからその辺に捨てとこうかと思ったけど、このアタシが直々に手渡しに行ってやろう。

「辰巳良平・・・ってなんか聞いたことある気ィすんなー」

 

取り敢えず3年男と言うことは判った。
なので男子棟まで乗り込む。取り敢えず制服だけはまともに着てみよう。
校門から出てくるジャージの男を捕まえて、笑う。

「3年の辰巳良平って知ってますか?」
「え・・・うちの部の先輩ですけど」
「あ、そうなの?今どこにいるか分かるかな」
「部活中・・・ですけど。・・・外周中だから、・・・回ってくると思います」
「ふーん・・・ありがとう」

笑顔で彼を解放し、あたしはポケットの生徒手帳を探る。
えーとどんな男だったか。 あ、やべ、写真が落ちた。例の男の写真。
ヒラリと飛んでいく写真を掴み損ね、地面に落ちたのと同時に誰かがそれを踏みつける。うわ。

「・・・・・・」

踏んだ方はゆっくりと足を上げた。
お、これはもしやサッカー部のユニフォームじゃないのか?サッカーっぽいぞ。野球じゃないだろう。
ひどく背の高い男だ。走っていたのに写真を踏んだのに気付いたのはなかなかだと思う。

「あ・・・」
「あー、すいません飛ばしちゃって」
「・・・君のか?」
「あー、なんて言うか」
「・・・事故だよな、今のは」
「へ?はぁ、まぁ事故ですね」
「事故だな。事故だ」

男はひとり納得して写真を拾う。
・・・こいつ、中学生だろうか。コーチとかじゃなくて?

「・・・あの、サッカー部の方ですか?」
「・・・そうだけど。中西か?」
「は?いえ、でなくて。辰巳さんって」
「俺だけど」
「・・・・・・」

・・・そりゃ、写真じゃ身長はわかんねェけどさ。
うーわーこいつ相当写真写りが悪いんじゃないだろうか。別人だ。

「・・・何か?」
「あぁ、生徒手帳が落ちてたんです」
「生徒手帳・・・?」
「はい。・・・その写真、これに挟まってたんですけど」
「・・・・・・」

生徒手帳を差し出すと辰巳という人はそれを受け取り、写真とそれを見比べる。
何だか呆然としているようだ。

「・・・その写真の人、」

びくんと辰巳が反応する。

「好きな人ですか?」
「神に誓って有り得ない」

なんて即答。

「・・・落ちてたって、何処に?」
「女子棟1階」
「中西の奴・・・」
「・・・・・・泣いてるんですか?」
「・・・このことは黙っててくれ・・・」

くうっと涙を拭い、辰巳は写真をあたしに押しつける。生徒手帳だけ自分のポケットに入れて走り出した。
えーと。写真要らないんだけど。口止めする気なら金払え。
・・・いやしかし、サッカー部ってのはなかなか楽しそうだ。
また機会があったら遊びに来よう。3年男子辰巳良平サッカー部。愉快な先輩だ。

あとで聞いたところによると写真の男は中西というやっぱりサッカー部で結構な有名人らしい。
合わせて辰巳の方も有名だとか。
愛の隔壁に行ってみれば証拠物件が幾つか見付かった。
なるほど。

「生徒手帳に写真とは、なかなかベタな先輩だ」

あの反応からして勿論誤解だとは知れてるが、あたしは敢えて噂を流してやったわけだ。
遊べるネタで遊ばない手はない。

 

 


・・・うん。
女版中西的。夢じゃないのよ。
ホントは夢を書こうと思ってて別バージョンがあるんだけど
→こんな感じ。
同じネタだけどこっちは辰中。あっちは夢。

031230

 

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