折 れ た (土山)


098:ワンパターンの続きであります。

 

 

「マジすんません」
「……説得力がないんですけどぉ」

部屋に来るなり人を押し倒し、力任せに抱き締めたまま土方は動かない。山崎の反応を待っているようだ。いや…なだめすかすように首筋に触れたり、体を抱くその手を腰へ下げたりしている。割と切羽詰まっているらしい。外で何して来たんだか、呆れて溜息も出ない。おまけに酔っ払いだ。

(くだらねー男…)

何でこんなの好きなんだろう。ゆるゆると迷いのある手を首に回す。その気になりかけた男の首をそのまま締めた。

「煙草出せ」
「山崎…」
「煙草」
「……」

体を起こした土方は恨めしげに山崎を見るが、彼の方は妥協を許さない。仕方なしにたもとを探って彼は煙草を差し出す。それを受け取って土方の下から這い出し、たんすに隠した。簡単なからくりを仕込んでいるので、単純に出すことはできない。我慢もできないらしい土方が背後に迫って、そのまま山崎を押さえつける。酒臭い。

「山崎」
「あんたね、俺が煙草の没収ぐらいで折れると思いますか」
「……」

土方の額が肩に落ちる。まさか寝ないだろうかと思ったが、身じろぎした隙に首に噛みつかれた。ああやばいな、本格的に酔ってる。後ろめたいとすぐにこうだ。

「……ちゃーんと、言うことがあるんじゃないですかね?」
「ごめん」
「それで?」
「もうしない」
「何を?」
「寝ゲロ」
「いやそれも本気で困るっちゃ困るんですけどね」

言うってことはしそうなのかよ。叩き出したい思いに駆られながら、土方の腿に触れる。顔を上げた土方と目が合った。

(……ヤベ、見ちゃった…)

今まで何度言っても土方が懲りなかったのは、最終的に山崎が折れるからだ。いつも許さないつもりでいるのに、捨て犬のようなこの目にやられる。反則だ。

(だって、こんな顔見れんの俺だけでしょう……)

例え酔っていようとも、山崎の揺らぎを見逃すような男じゃない。顔を近づけられて、簡単に唇を許す。後はもう、なし崩しだ。

 

*

 

「デケェ声出すなよ…」
「誰のせいですかッ」

二日酔いの頭を抱える土方に叫び、彼の首にかけた帯を引く。こいつほんとに絞め殺そうか。起きた瞬間に畳の焦げ跡を見つけた時は卒倒するかと思ったほどだ。大体どっから煙草調達したんですかッ!大声に顔をしかめながら、部屋から取ってきた、と臆面もなく土方は言ってのける。

「…わざわざ俺の部屋で吸うなよッ……」
「ちょ、山崎マジで締まっ……」
「ようし山崎!そのままだ!」

いつの間にか入ってきた沖田が夫婦喧嘩に手を叩く。殺っちゃえ!と叫ばれるのに土方が怒鳴ろうにも、今はそれどころではない。

「禁煙の約束するなら離してあげます」
「…山崎、それもう殺す気だろ」

奥様の怒りは相当らしい。

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